2008/02/03
Dragon Ash/HARVEST
Dragon Ashというバンドをご存知だろうか。
何年か前までは、オリコンのチャートの上位に常にいた、世間の言うところ「モンスター・バンド」です。ヴォーカルの降谷建志を中心として96年頃に結成されたのですが、彼らがデビューしたことによって、所謂『J-HIP-HOP』が爆発的に日本に広がりました。
というのもDragon Ashは、ミクスチャー・ロック・バンドで、デビュー時はパンクとかハードコアをやっていたのですが、98年頃にHIP-HOPに進出して大成功を収めた、のですが、俺は当時の彼らをあまり好きではないのです。
やっぱり彼らは純粋なHIP-HOPのアーティストではなかったし、ロックと融合したそれは、観客の耳にひじょうに聴きやすかったのです。
HIP-HOPはあまり聴き易すぎても、ちょっと問題です。そもそもがメッセージ性の強いジャンルだし、極めて「社会的な」音楽だと思います。
しかし、いまの日本人の多くは、HIP-HOPに恋愛を絡めた歌を好むのです。別にそれでもいいのですが、何というか、あまりにも気色悪いのですよ。
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一生一緒にいてくれや
みてくれも才能も
全部含めて
愛を持って俺をみてくれや
いまの俺にとっちゃ
お前が全て
一生一緒にいてくれや
ひねくれや意地っ張りなんかいらない
ちゃんと俺を愛してくれや
俺を信じなさい
いつのまにか本気になった俺は
お前の優しさ 強さに惚れた
お前だけは
手放しちゃいけないと思えた
今は 湧いてくる愛しさに
溺れたい
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三木道三の『Lifetime respect』です。
「どこが問題なの?すっごい良い詞じゃん!!」多くの人はこう言うのでしょうが、はっきり言って気持ち悪いです。
ありえません。
ここで歌われているのは、愛じゃない。「愛のようなもの」です。本来すごく曖昧なものを、まっすぐに歌ってしまうことで、何かが決定的に損なわれているような気がします。
Dragon Ashはさすがにこんな歌詞は書きませんが、でも、「Dragon Ash」というバンドが、日本の音楽に与えた影響は強いのです。強すぎて、それによる弊害も多いのです。
たいしたスキルのないMCというか、グループが大勢現れて、もっと重要なアーティストは隠れてしまってる。
話がかなりずれました。
いまのDragon Ashは、もうHIP-HOPではないです。今は、エレクトロニカだったり、ラテンだったりを行き来しているのですが、俺が紹介するこのアルバムは、ジャンル特定がほとんど不可能なように思えます。
いわば、「音楽的な傑作」です。
はっきり言ってしまえば、『HARVEST』というアルバムは、全く歌詞に意味がありません。いや、少なくともあまり重要なことは書かれていないです。
俺には、いまの彼らの曲について説明できるだけの言葉がない。
ただ言えるのは、リズムが素晴らしいということだけです。聴いていて、自然にからだが動いてしまうような、浮かび上がるような、音が体当たりしてくるような、そんなリズムです。
最後に、Dragon Ashが一昨年発表した『夢で逢えたら』という曲の歌詞を引用します。
彼らにしては珍しくラヴソングです。
そして、メロディーもさることながら、歌詞が素晴らしすぎます。
全然、親しまれるような歌詞ではないし、嘘臭い言葉もありません。きっと、彼らは愛の語り方を知っているのだと思います。
興味のある方は、ぜひ聴いてみてください。そこら辺のラヴソングより100倍いいです。素晴らしい「愛の歌」です。
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たとえば今だって そう残した
匂い零れ出して
辿ればすり合って 夜を越した
憩いの漏れを溶かして
ほどけた この手
手繰り寄せて
凍えた頃ね
爪で書いたんだ…夢で逢えたら
(中略)
束ねた思い
奏でた今宵
この胸吹き抜けた
南風を歌おう
月夜に降りつけた光たちの歌を
白く尚
(中略)
狂えるほどの 星空に毎夜
震える頬の少し そばにいたいよ
願いただ…夢で逢えたら
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